こちらは手塚治虫先生の描いた同名の漫画を原作とした、長編セルアニメーション映画になります。
あらすじ
いつとも知れない未来。
私立探偵のヒゲオヤジとケンイチ少年は、ある事件を追って人間とロボットがともに暮らす超近代的な巨大都市国家「メトロポリス」へやってきた。生体を使った人造人間の開発で問題となり、国際指名手配になっているロートン博士を探すためだ。
ところが、ロートンの秘密の研究所が何者かに放火され、捜索中で現場近くにいたケンイチは、逃げ遅れた不思議な少女ティマを救った。記憶をなくしたのか「ワタシハ、ダレ」そうつぶやくティマ。
ロボットと人間の、そしてメトロポリスの運命が自分に託されていることをティマはまだ知らない……
(「手塚治虫公式サイト」より)
感想
とにかく作画が素晴らしい。古くささを感じず、終始、きれいなアニメーション。たまに劣化部分があるのか。古い作品特有の「プツプツ」が画面に現れるときがあります。それくらいで、新作かと見間違うほどでした。
BGMは全体的に、“おしゃれ”。英詩つきの曲もあって、映画の世界を華やかにいろどっております。
ストーリーはベタと言えば、ベタ。主人公ケンイチは少女ティマを助けたことによって、いろいろ巻き込まれていく形になります。少し古い作品だと、よくあるパターンですね。
ラストは「自分がロボットだ」と知ったティマが、黒幕たるレッド公の思惑通り『超人の間』の椅子に座ります。ありとあらゆる情報がティマのもとへ集まり、ケンイチとの思い出すらなくしてしまいました。
「人間は不要」
スーパーコンピュータとなったティマが、そう答えを出しました。人間に従順だったロボットたちが、一斉に牙をむきます。世界を掌握しようとしたレッド公の陰謀は、失敗に終わりました。
皆が逃げ惑う中。ケンイチだけはティマのもとに残り、椅子から引きはがそうとします。 体中に電気が走り、ティマにつながったコードが邪魔をしてきます。それでもあきらめなかった結果、無事に引きはがせました。
けれども“思い出”をなくしてしまっているティマ。ケンイチに襲いかかります。あきらめずに、なんども呼びかけるケンイチ。
三度目あたりでようやく謎の装置が停止しますが、空中に放り出されてしまいました。
コードが引っかかっている状態で、ぶらさがっているティマをケンイチは助けようとします。ティマの人工頭脳は、再起動中でうまく動きません。ケンイチと出会ったころまで、記憶が初期化されてしまいました。
「ワタシハ、ダレ」
ケンイチの手をつかむことなく、そう言い残してティマは落ちていきました。日が開けて、ティマを探すケンイチ。そこにはティマの躰のパーツが、バラバラになって落ちていました。
エンドロール後にはメトロポリスに残ったケンイチが、雑貨屋を開いてました。
子供っぽい表現もありましたが、大人こそ見てほしい作品ですね。子供の時に見たとしても、「つまらない」で終わってしまう気がします。派手なシーンもありますが、各キャラクターの思惑が複雑に絡み合っているのです。
レッド公の養子ロックが、一番、不憫に感じたかな。父を思って、父のために、行動していたわけだからね。ティマの命を狙ったのだって、父を思っての行動でした。レッド公はロックに、冷たいのに。冷え冷えの親子間だったよ。最後は致命傷を負いながらも、「父のために」何かを作動させてました。
そのときに、ようやくレッド公は「ロック」自身を見てました。最後の最後に、「子」の思いが「父」に通じたのでしょう。
どの視点をとっても、どこか切なさの残るエンディングでした。