あらすじ
銀河系に一大帝国を築き上げた帝国と民主主義を掲げる自由惑星同盟が繰り広げる飽くなき闘争のなか、若き帝国の将"常勝の天才"ラインハルト・フォン・ローエングラムと同盟が誇る不世出の軍略家"不敗の魔術師"ヤン・ウェンリーは相まみえたーー。
感想
ある程度、ネタバレをネットで読んでから小説に挑んだわけですが。それでもキャラクターがどんどん、いなくなっていってしまうのは辛かったですね。知ってましたけど、知ってましたけど!
正伝(いわゆる本編)は、だいたい戦争ばかりしている印象。戦記物なんだから、当たり前と言えば当たり前です。帝国、同盟の順で物語は書かれていますが、一巻目と二巻目までの同盟側はヤン視点感が強かったですね。
三巻目以降は同盟側も客観的な視点が強くなった上に、帝国側の尺が多くなっていきます。ヤンが暗殺されたあとからは、とくに帝国側に尺がさかれているように感じました。そもそも八巻目以降は、顕著に"物語をたたむために物語をすすめている"感覚でしたね。
外伝は「短編集かな?」と思っておりましたが、短編集なのは五巻目の「黄金の翼」だけでした。それも半分くらいは作者のインタビュー。
内容としては戦争シーンもあるにはありますが、国内のいざこざやら事件の真相を探るために主人公あるいは準メインくらいのキャラクターたちが奔走するエピソードが多い印象。その中で、正伝では掘り下げられなかったキャラクターたちの出会いや意外な一面が描写されていました。
レビューを見る限り外伝は読まなくてもいいような内容なのかと思いましたが、キャラクター重視な方には楽しめるのではないかな。けっこう、面白かったですし。個人的には、もっとアッテンボローにスポットを当てたエピソードを読んでみたかったかな。正伝でも言えますが外伝でも、どこか脇役に徹しているので。
今回、創元SF文庫の全15巻BOXセットを購入しました。我ながら、奮発した。奮発しましたよ。こちらは「アルスラーン戦記」と違い、良く纏められているとの話だったので、最後まで読む決心で買ったわけです。結論、買って良かったですね。
ヤンが暗殺されたとき、知っていたのに「どう気持ちを処理していいか」わかりませんでしたがね。はい。
ただ"この物語"の神髄としては、ヤンの退場は致し方なかったんだろうなと。"歴史は英雄ではなく、今を生きる一人一人がつくりあげるもの"だから英雄なんていてはならない的な考えが全体を通してありますから。
正伝の九巻目だったかな? 同盟側の主人公がヤンからバトンタッチされて、ヤンの被保護者ユリアンに変わったとき。ユリアンは「ヤン提督なら、どうするだろう」と考えているシーンで、『自分で考えるんだよ、自分で』とのヤンの言葉を思い返していました。これは読者に対しても、向けられている言葉だなと感じています。
自分で考えるための"種"を心に植えてくださったから。水をやり、根を張らせ、茎を伸ばすのは自分の役目でしょう。ときにキャラクターを心に召喚して、言葉を借りるのもいいでしょうけれど、借りっぱなしではいけないんだろうな。