♪甘いお化けカボチャをパイにしてはだめよ。おまじないをかけて、あなたに会いに行かなきゃ(「絶対迷宮グリム」オープニングテーマ『秘密の森の舞踏会』より)
童話あるあるではあるのですが、古今東西、よく似た話ってあるんですよね。日本で言うところの「落窪物語」ですが、今回はあくまで『灰かぶり』と名の付く作品にだけ絞って書いていこうと思います。
最古の記録として残っているのは、紀元前一世紀の『ロードピス』の話
エジプトのお屋敷に美しい女奴隷ロードピス(意味:真っ赤な頬)が住んでいた。屋敷の主人は優しい人であったが、すみずみまで目が届いておらず。ロードピスは他の女召使いに、いじめられていた。あるとき、ロードピスが上手に踊るのを見て主人がロードピスに薔薇の飾りの付いたサンダルを贈る。すると、他の召使いたちがいっそうつらくロードピスに当たるのだった。
ある日、エジプトの王様が民衆を都に招き、大きな祭りを催した。女召使いたちは祭りに出かけていったが、ロードピスには祭りに行けないようにたくさんの仕事を言いつけた。仕方なく言いつけ通り、川で服を洗っていると。サンダルをあやまってぬらしてしまう。岩の上でサンダルを乾かしていると、ハヤブサが持って行ってしまう。ハヤブサが飛んでいって、王様の元にサンダルを落とす。ハヤブサがホルス神の使いだと考えた王様は、サンダルに合う足の娘と結婚すると宣言する。
王様がお屋敷にやってくると、ロードピスにサンダルを履かせる。みごと、ぴったりとはまった。サンダルの片割れも見つかり、王様は宣言通り、ロードピスと結婚する。
バジーレ『灰かぶり猫』
物語としては最古といわれる作品。
主人公セゾッラは継母から、つらい仕打ちを受けていた。家庭教師につらさを毎日のように訴える。教師はセゾッラに継母を殺害するようそそのかし、「『先生をお母様にして』と頼みなさい」と言った。実行したセゾッラだったが、次は元教師(三番目の母)と六人の娘たちからひどい仕打ちを受け始める。
父の大公が旅行中に継母の娘には豪華な土産を約束するが、セゾッラは妖精の鳩がくれるものが欲しいとだけ答える。大公が妖精から授かったナツメの木の苗を土産として授かったセゾッラは、木を大切に育てる。
ナツメの木は実は魔法の木で、彼女は木の魔法によって着飾って祭りに参加する。むろん、国王に注目される。
国王の従者に追いかけられている途中、セゾッラは履いていたピァネッレ(木靴)を落としてしまう。
後日、国王が国中すべての娘に靴を履かせた結果。セゾッラだけが靴に合致して、王妃に迎えられる。
ペロー『サンドリヨン』
ガラスの靴を履かせ、カボチャの馬車に乗せるモチーフはここから。と、言われている。
ただ一般的に知られている話と違うのは、舞踏会は二晩にかけておこなわれている。
グリム『アッシェンプッテル』
魔法使いは登場しないので、カボチャの馬車は出てこない。『灰かぶり猫』ではナツメの木の苗を植えるが、こちらでは"ハシバミ"。美しい衣装を持ってくるのは、白い小鳥。
舞踏会は二晩にかけておこなわれ、靴は一晩目は銀、二晩目は金。
二晩目に靴を落としたのは偶然ではなく、王子があらかじめ階段をオイルでべとべとにしておいたから。
靴を手がかりに王子が彼女を探す際、連れ子の姉は足を切り落とす。しかし血がにじんでばれる。
なお末尾に姉二人は、鳩に目をくりぬかれる描写が描かれるときもある。
放談
毎度思うけど、豪華な衣装を着て王子様を振り切って逃げるシンデレラ。強い。
ちなみに一時期「本当は怖い系」がはやりましたが、あれは筆者の創作が多分に含まれております。くれぐれも真に受けないように。